昨年の6月下旬に初めて北海道登山に行ったが、大雪山系にてヒグマに遭遇した。詳細はYAMAP(最下段リンク)をご参照ください。その時に自分がとった行動が正しかったか否か?振り返ってみたい。
ヒグマとの遭遇
6月24日(土) 晴れ一時小雨 遭遇前日
朝一番のロープウェイで旭岳へ。その後、宿泊先の白雲避難小屋へ。白雲避難小屋付近はヒグマが現れることがしばしばあるようで、避難小屋(テント場)近くに現れている写真や動画がネット上に見受けられます。
6月25日(日)晴れ 遭遇当日
避難小屋は満杯、テント場も結構盛況のようだった。朝は早く出発。天気は良い。本日向かう忠別岳、明日登るトムラウシも見える。先行者はずいぶん先に一人見える。1時間ほど前に出たのか?小生も出発。白雲岳周辺は多くの登山者でにぎわっているが、トムラウシ方面へ向かうのは1割程度か?後から分かったが、白雲岳避難小屋(含むテント場)にいた登山者の内ヒサゴ沼避難小屋に向かったのは小生を含め8名(ソロ4名、ペア2組)。天気も良く、本州では考えられない景色を見ながら忠別岳に向かう。左奥の王冠のような山が『トムラウシ岳』。
高山植物には少し早いがウルップソウがたくさん咲いている。大山高原温泉方面はヒグマが出たようで通行禁止の看板。旺文社の地図でも忠別岳まではヒグマが多いと記載されている。もちろん
・クマ鈴は2個付けている
・スプレーは持っていない
どうせクマと遭遇するのは出合頭。持っていても吹き付ける余裕なんてないだろう、との判断。しかしこの判断が・・・。2時間ほど歩いて平らな大きな石があるところで休憩。蕾だが一面コマクサの群生地。ザック・トレッキングポール、首にかけていたスマホを外し腰を下ろして一服。トムラウシがきれいだ!!
ヒグマとの遭遇
何気なく後ろを振り向く。決して音や気配、獣臭がしたわけではない。ホント、何気なく。しかしそこにはヒグマが。
感覚的には5m前後、実際は10m前後だろう。こっちを見ている。そして近づいてくる。目が合う。
『どこか違う方向へ行ってくれ』
と祈るが、祈りもむなしくヒグマは前足を払うように横に振り、顔を上げ視線をこちらに向けて近づいてくる。
『なんで逃げない!人間がここにいるのは分かっているのだろう!』
『逃げるしかない。』
ヒグマからの大脱出
クマに会った時の行動は高校時代に本で読んだことがある。
・大きな音を立てない
・派手な動作をしない
・クマから視線を外さない
・クマの目を見続けながら後ずさりをしてその場から離れる
であったと思う。ヒグマを見て、静かに(とは言っても20kg弱でクマ鈴もついているので音を立てないで背負うことはできなかったが)ザックをしょって、スマホを首にかける。その際に写真をパチリ。今思えば無謀な行動だったかもしれない。最後に2本のトレッキングポールを片手で持ち、静かに後ずさりを開始。ヒグマは相変わらず止まったかと思うと、前足を横に振り再度顔を上げこちらを見てゆっくり向かってくる。前足はエサを探しているのかな?と思ったが、後から家内に
『何バカのこと言っているの、威嚇しているんじゃない』
あれは威嚇行動だったのか?と後の祭り。小生もヒグマを見ながら後ずさりを続ける。ヒグマはまだこちらに向かってくる。距離は少しずつ広がる。ハイマツ?エゾマツ?で視線が切れた瞬間、前を見て猛ダッシュ。20kgのザックを背負ったスピードとは思えない速さ。ウサインボルトも顔負けか?どのくらい走っただろう。2~300mか?立ち止まり振り返る。
『ヒグマは追ってきていない』
『低木の樹林帯にも動きがない』
逃げ切った!震えてはいないが、涙が出そうだった。振り返るのがあと数分遅ければ、後ろから襲われていただろう。
まとめ
人がいるのになぜ近づいてきたのか?推測だが、
・ヒグマのテリトリーに入った外敵を追い払うことが目的ではなかったのか?
・テリトリーから出て、危害を加えるような行動をとらなかった外敵に興味をなくしたのではないだろうか?
もちろん振り返った際に大きな音を出したり、大きなジェスチャーで威嚇していれば、走って向かってきて襲われたと思う。自分が取った行動に間違いはなかったと思う。一方で、クマよけスプレーに関する認識が変わった。ヒグマにはクマよけスプレーは必須。出合頭では利用できないが、今回のようにヒグマは人を避けない。至近距離(2~3m)まで来た段階でスプレーを吹き付けることで撃退できるのではないだろうか。一方でクマ鈴は無意味か?人と分かっていても近づいてくる。あの時、ラジオを鳴らしていてもヒグマは近づいてきたであろう。無いよりはあった方が良い程度ではないか。しかしツキノワグマにはクマ鈴は必須。小生も2度ほど(40年ほど前の奥秩父将監峠付近、4年前の黒部下の廊下)ツキノワグマには遭遇しているが、いずれもこちらの存在に気づき走って逃げて行った。
尚、ヒサゴ沼避難小屋で一緒になったソロの男性も、忠別岳への登りでクマに遭遇したそうです。登山道前方100m程度の所にいてにらみ合い、その後稜線の方へ逃げて行ったと言っていました。旺文社の地図にあるように白雲から忠別岳はヒグマのテリトリーなのでしょう。今回の遭遇で実感したことは
ヒグマにとって我々が外敵であること!
こんなかわいい動物ならよかったけど!!
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